Confidencial Talk―釣竿四方山話3 ロッドの取扱について

開発

さて、今回はロッドがカタチ作られる上で欠かせない【樹脂】にまつわるお話。その樹脂がもたらす素材特性について、発売を控えた新製品及び、現在、フィールドワークにかけている試用を進めている試作品などについて触れようと思ったのですが、直近で少しお問合せの多かった、樹脂は樹脂でもブランク成型以外にも用いられる樹脂について、ロッドの取扱と併せてやんわりお話してみたいと思います。


樹脂と水分-高温多湿はロッドの大敵

釣竿(以下、ロッド)のメンテナンスの基本として、「釣りを終えたらできるだけ速やかに真水で塩分や汚れを落として、風通しの良いところでしっかり乾燥させましょう」という記述を目にされたことのある方は多いと思います。

前回、ロッドのブランク(カーボンのシャフトそのもの)の主材料は炭素繊維と樹脂で構成されるプリプレグ(カーボンシート)であることについてお話しましたが、スレッド(ガイドを固定するために巻かれている糸)、リールシートやグリップマテリアルなどのハンドル周り、各種の金属パーツなど、ロッドの組み立てには多くの部分でエポキシなどの硬化性樹脂を用いて接着固定されています。当然、水に晒されるのが前提なので、ロッドメーカー各社は耐水性や耐蝕性を考慮し、ロッドの性質、用途・目的に応じた適性を示す樹脂を選択採用しているのですが、まだまだ理想を100%叶えるものはありません。
そのため、水分が付着したままロッドを放置するとブランクの塗膜部分が白濁したり、ブリスター(気泡)の発生を招くことがあります。また、ロッド本体が濡れたままの状態が続くことで、ハンドル内部の接着部位が強度低下を起こし、異音や軋みの発生に繋がることがあります。

水中に長いこと浸かっていると透明なプラスチックやナイロンラインが白濁するように、水分は樹脂の変質を促します。これが私どもロッドメーカーの「しっかり洗って乾かしてあげてください」ということなのです。

素材の弾性率や目付によって、プリプレグ自体に含浸されている樹脂の種類、含有率が千差万別というのは前回お話しした通り。ガイドスレッドに塗布される樹脂やグリップの組み立てに用いられる樹脂はロッドの特性によって、粘度の高低による作業性や、硬化後の硬度によって使い分けたりします。ひと振りのロッドにおいて、一口に「樹脂」と言っても実に様々な特性を備えた樹脂が用いられているのです。「仕上がりの美しいツヤ・照り、適度な硬度で経年変化にも強い」と思っていたものが3年目を経たころ一斉に剥離を初めて大変なことになった、なんて昔話もあるくらいロッドメイキングにおいて、樹脂の選定や扱いは私達にとってブランク素材同様、重要なものなのです。「高温多湿はロッドの大敵」というのは結局、樹脂の変質を避けるということなのです。

 

人間もロッドも釣りが終わったらさっぱりしたいのは一緒

海水・淡水を問わず、釣りを終えたら、できるだけたっぷりの真水で塩分と汚れを洗い流しましょう。釣行後、釣具一式と一緒にシャワーを浴びてしまうのも一興です。

PiC1.jpg 

但し、この際くれぐれも熱いシャワーを直接かけてはいけません。水もしくはぬるま湯(具体的には3036℃くらいまで)でブランク全体、ガイド、ハンドルの細かい部分までしっかりと洗い流します。

人間もロッドも釣りが終わったらさっぱりしたいのは一緒なのです。きちんと手入れをしてあげることで、腐食や変質から守るとともに、破損箇所の発見や不具合のチェックにもなります。

 

ロッドの洗い方

・ロッドのブランク部分

ブランク表面に付着している乾燥した塩分やカリカリにこびりついた藻などは、柔らかい布や食器用のスポンジなどで、優しくこすり洗いしてください。しつこい汚れや、港湾部など油膜が浮いているようなフィールドでの釣行後の場合であれば、食器用中性洗剤などお使いいただくのもアリです。(シンナーやベンジンなどの溶剤は塗膜や樹脂の変質を招くことがありますので、使用をお控えください。)また、継竿の場合やグリップ着脱式のロッドは、フェルール(継ぎの部分)に砂や汚れが付着したままですと、接合時、固着やキズの原因となることがありますので、しっかり汚れを取り除き、よく水で流しておきましょう。但し、洗ったあとはブランク内部に水が残らないようご注意ください。ちなみに、ロッド継ぎ方についてですが、「釣りをしているとよく緩む」、「しばしば穂先が抜ける」と言う方は左記の方法をお試しください。

    穂先と元竿のガイドが正反対のまま、8割がた挿し込む

PiC3.jpg 

    捻りながら穂先と元竿のガイドをまっすぐ合わせる

 なんとなくドヤ顔すみません

PiC4.jpg 

この時、捻り過ぎてしまって、戻して調整すると横方向の摩擦が逃げるので、最初から挿し直してからやり直してください。抜く時は反対に捻ってもらうと簡単に抜けます。慣れたら最初から捻り入れても構いません。

但し、重たいルアーを投げ続けたり、大きな魚とやり取りしたあとは適宜、緩みがないかご確認ください

 

・ガイド

フレームやリングの頑固な汚れは歯ブラシなどを利用してよく洗います。溝や隙間などもしっかりと洗ったあとは綿棒やティッシュペーパーでこよりをこしらえるなどして、水分や汚れをよく拭き取りましょう。※富士工業社製のチタントップガイドは、フレームはチタン製ですが、パイプはステンレス製のため、洗浄後は水分をしっかりと拭きとってください。

ついでの豆知識ですが、「釣行中にラインが妙な切れ方をする」「頻繁にラインが切れる」、といった症状が見られる場合、何らかの要因でガイドリング表面にキズが入っていたり、リングが割れていることが考えられます。一般的に多く用いられているSiCリングガイドのリング(ガイドのフレームにはまっている黒い部分)は瀬戸物のようなものなので、何かに当てたり挟んだりすると、簡単に欠けたり、割れたりします。そのため、不自然にラインが切れたりする場合の原因の多くはトップガイドからティップ周辺のガイドリングの欠損によるケースが挙げられるですが、そのような場合は写真のように一箇所ずつ入念にチェックしてみましょう。カッターの刃をリングの内側に当てて、一周させます。または、ラインを張った状態でリングの内側をなぞってみましょう。リングの欠損や割れがあれば、刃やラインが引っかかります。

PiC5.jpg SiC/TORZITEなどのリング素材は極めて硬度が高いので、カッターの刃を当てたくらいでは傷がつくことはありません。

PiC6.jpg 現場であれば、瞬間接着剤などで応急処置をすることも可能ですが、ガイドフレームがねじれていたり、極端に変形している場合同様、ガイド本体の交換が必要となります。お近くの釣具店様かメーカーにお問い合わせください。

 

・ハンドル

まずはシートナットなどの回転部分、金属部分をよく洗いましょう。一番汚れているのはコルクやEVAなど、実際に握りこむグリップマテリアルの部分です。手の脂はもちろん、魚のヌメリなどが付着していれば、先のブランク部同様、スポンジと中性洗剤を使用して優しくこすり洗いをしてください。余り強くこすり過ぎるとコルクは摩耗が激しくなってしまう場合もありますのでご注意ください。

 

さっぱりしたら、涼しいところでひと休み

このように各部を洗い終えたら、よく水を切り乾いた布で水分をよく拭きとり、風通しのよい日陰で乾燥させてください。「腕の延長」として、日々、みなさんのフィッシングライフの傍らにあるロッドたち。是非、長くお付き合いいただけるよう正しくお手入れして、大事に扱ってあげてくださいませ。

関連記事
ホーム