マツモトの開発手帖 【Foojin’の血脈―胎動】

自由でいい。わがままでいい。

信頼する彼らの腕と想いとセンスを、最新のノウハウを結集してカタチにする。一人一人が考える「現時点で自分に必要なロッド」、「今の自分のスタイルを進化させるようなロッド」を純粋に要求してもらう。自分だけのカスタムロッドをオーダーするような感覚でロッドメイキングに向き合ってもらうのがFoojin'ADの開発プロセス(当該製品のリードテキストより引用)―を経ていくなかで、東レ()独自の革新的微細構造制御技術"ナノアロイ®テクノロジーを適用した先端材料"の導入、スリットカーボンテープ、4軸カーボンの融合というアピアだけのオリジナルブランクを研ぎ澄ませていったのが5年前のお話。

ぶっちゃけた話、ごく一部の方はご存知の通り、◇◯新素材!◯◯製法とか△◇構造!といったアプローチとは無縁のロッドメイキングに慣れ親しんできた小職にとって、このFoojin’ADの開発プロセスはFoojin’R以上に面白くも難しさを感じさせることが多かった。

 

新しい素材や工法も適材適所、でも凡てを試しておかないと-

APIAらしいテイストに加え、ベースとしてのブランクに新しい素材や工法などを意味のあるものとして搭載しなければならないという思いと、当時、並行して進めていた4代目Foojin’ZBeast Fangでもそうだったが、プリプレグのみならず、ガイドやリールシートといったコンポーネンツにおいても、この時分にはAGS/チタンSiC/チタンTORZITEなど比較試用課題も多く、乱暴に言えば、あらゆる選択肢に対してフィールドワークに臨むプロスタッフ諸兄においても、もはや「何が何だか」状態に陥りかけていたのも事実。

4代目「Z」の大きな特徴は、全長4軸カーボンブランクに、ガイドパーツに軽量かつ高剛性のダイワ「AGS」を搭載したこと。同ガイドを搭載したのは同社以外では弊社が初めて。そういう意味でも、ブランクの開発はこの「AGS」の特性との「親和性」、あるいは「相乗効果」を高められるかがキーだった。細身・肉厚かつシャープなブランクこそ、「AGS」と相性が良く、感度、アキュラシーを高めることができると分かった。」と後に代表・宇津木が語っていた通り、コンポーネンツひとつとってみても検証には時間がかかる。蓄積されたノウハウやデータがあっても、だ。

Foojin’、これはZADも使い手の技量が高ければ高いほど、引き出しうる性能が底知れぬほど深まることを是非、体感してほしい。」とは某プロスタッフの弁。

とは言え、小さな差異でも明確に感じられる質感や、悪くないけど「何か気になる」といった点を選別淘汰していく作業の中で、それはしっかりと鍛えられることとなり、現行のFoojin’ADは後に某誌の人気投票でも純然たるシーバスロッドとして初めて大手メーカーさん以外で選出されたとか、そんなこともあったり、ここで得た知見は大きな意味を持つこととなった。


知り難きこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し。 

現在では一部アパレルのプリントに散見できる程度だが、APIAの象徴として長きにわたって用いられてきた風神のマークは「風林火山」がモチーフとなっている。「風林火山」の4文字が有名過ぎてあまり知られてはいないが、孫子の説いた「風林火山」に続きがあるのをご存知だろうか?「風林火山」には陰と雷という2文字が続いており、正式には「風林火山陰雷」の6文字となる。知り難きこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し。今見えているものに盲点は無いのか?より良いロッドを生み出したいと、シーバスロッドの頂きを目指して宇津木が立ち上げた「Foojin’」はそれまで10年の歳月をかけて歩を進めてきた。今後も進化と挑戦を続けるというメーカーとしての理念は決して揺るぎないものであり、それを示すものとして鋭意開発中であるのが、このFoojin’Zである。

それは、軽く風を切り、ティップが空を駆るキャストフィールとAPIA史上、最高の操作性を示すものでなければならない。

 

 

話を戻そう。

現在、すでにシリーズとして成立するほどの試作機種を作成、数名のアンバサダー諸兄のフィールドワークに持ち込まれている。今回は、その中でも色んな意味で進捗度合いが高い濱本さんのモデルについて触れてみよう。

ビーストブロウル、ビーストファングのいずれを手がけるにあたっても、ドリフトマスター・濱本国彦が求めるのは、それまでよりもさらに「感じる」ことができるロッド。現在、いくつかのモデルを預けているのだが、みなさんが気になる代表的なところでいえば、短めのアレとハリハリのアレはどうなるのか?といったところだと思う。ショートレングスの試作品は具体的には、「ナチュラル7」の軽快さ、「ビーストファング」のパワーと飛距離、これらがバランスよく融合され、尚且つ、ロッドティップで「ライン」の重みを手元に感じられる繊細さを持ち合わせたようなロッドだ。現時点での試作品は2000年初頭くらいにバスロッド界を席巻したような超のつく高弾性組成比率を上げたモノ。作っておいて何なのだが、それぞれのモデルの1本目の試作品が届いた時に感じたのは、10年以上前に紀伊半島の奇才とこしらえたテレスコのエギングロッドや、時の人気エギングメーカーさんの最硬モデルといった趣き。おおよそシーバスロッドとは思えないその張り感に笑いを禁じ得なかった。だが、前稿で触れたとおり、「最もトンガッたシーバスロッドを作ろうとしている」という方向性を最も体現しているのもこのモデルに他ならなかった。最新の試作品では「ビーストファング」を凌駕する張りの強さと剛性感を纏い、繊細さ、そして、その間にある「流れ」や「風」をも瞬時に利用できる操作性の高さをもたらしているとの所感を濱本さんからも得ている。


現代シーバスシーンにおけるレーゾン・デートル

だが、一方でまだまだ脆弱さは拭えない。事実、これまでに製作した9㌳の試作品は既に2本が折損しており、意図に適うパフォーマンスを体現するにはまだまだほど遠い。実際、通常の素材や製法で今どき「折れる」ロッドを作ることの方が難しい現在において、代え難い特性/質感を盛り込もうとしているが故のことなのだが…。

 

「ルアーとラインのコントロール、フックセットからのリフト&リーリング。これらの操作のスピードが上がればキャッチ率が上がることは間違いない。

僕の考えうるわがままを全部盛り込んだ「トンガッたロッド」が具現化する、「究極の操作性」を是非、体感して欲しい。この感覚の向こうに、今まで出会う事の出来なかったシーバスが居ることは確実なのだから!!

という氏の要望に応えられるかどうかは、ある部分でAPIAが現代シーバスシーンにおける存在価値や意義を示すことができるかどうかということに他ならないのである。

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